前回は国民年金の話でした。
国民年金は40年かけて800万投資して、年金で1,560万回収するゲームでした。これは全員共通のルールなので、話は単純ですし、一見投資家に有利に見えます。
さて、今回は、複雑怪奇、魑魅魍魎の厚生年金です。こいつはやばい。
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厚生年金とは
厚生年金とは、国民年金に上乗せされて受給できる年金のことです。よく年金の2階部分と言われたりします(1階は国民年金)。
企業に勤めているサラリーマンは全員、厚生年金制度に加入しています。
(公務員、自分の企業を運営する社長なども含む。専業主婦は対象外)
派遣社員でも、週20時間以上働いて、月収8.8万円以上もらっていれば、厚生年金の対象です。
厚生年金基金に加入することで、国民年金分とセットで保険料を給与から支払います。
厚生年金基金のいいところは、1か月でも支払いをすれば、受給資格があるところです。
就職1年でバックれてフリーランスになったとしても、その後も国民年金を払っていれば、スズメの涙ですが厚生年金の上乗せがあります。
厚生年金の保険額、受給額のルール
はっきり書きます。
厚生年金は、わざと支払額と受給額をわかりにくくしている欠陥商品です。
できるだけ、ルールを簡単にして解説します。
厚生年金の支払額のルール
厚生年金支払額は、年収×18.3%で計算できます。そのうち半分は、企業負担です。
なので、年収600万円なら、600万円×18.3%=110万円。これを企業と折半するので、個人負担は半分の55万円です。
標準月額報酬、標準賞与額、などわかりにくくしていますが、結局のところ、全てのお給料に対して18.3%で計算されます。(家賃補助、昼食費、交通費等含みます)
月収が65万円を超えたら、それ以上は増えません。
毎月、59,475円が個人負担の支払額上限です。
ボーナスの上限は、1回あたり150万円です。
なので、厚生年金の支払額は最大で、
月収65万円×12か月+ボーナス年2回150万円=年収1,080万円のとき、
5.9万円×12か月+13.7万円×2=98.2万円/年、の個人負担になります。
(最大と書きましたがボーナスが年3回以上あるとそれ以上払います)
厚生年金の受給額のルール
厚生年金の受給額は、1年分保険料を払うと、
年収100万円あたり、国民年金に約5,500円/年、上乗せされる。
これだけです。あれだけ細かくルールが決まっているのに、計算はこれだけです。
なので、例えば、年収400万円のサラリーマンが、10年勤続して、
その後はずっとフリーランスとして活動して、国民年金しか払わなかった場合、
もらえる年金額は、国民年金の78万円/年+厚生年金(5,500円×4倍×10年=)22万円/年で合計100万円/年です。
厚生年金の保険料上限があるので、年収1000万あたりから計算が少し細かくなりますが、それ以下の年収の場合、上記の計算でほぼ間に合います。
なので、年収800万の人が10年厚生年金をはらった場合、
5,500円×8倍×10年=44万円/年が厚生年金になります。
合計で、国民年金78万円+厚生年金44万円=122万円/年の受給額です。
厚生年金のやばいところ
さて、勘のいい人は気づいたでしょうか?
厚生年金の保険額は、年収比例でした。
年収800万の人は、年収400万の人の2倍の保険料を払います。
が、もらえる額は2倍になっていません。100万円→122万円に1.22倍になっただけです。
つまり、厚生年金は年収が上がれば上がるほど、割に合わなくなってくる商品です。
厚生年金は元が取れる?払い損ってほんと?
年収600万円で考えてみます。面倒なので、20歳で就職して60歳で退職するまでずっと年収600万です。
このとき、厚生年金の個人支払額は、600万×9.15%×40年=約2,200万円です。
厚生年金受給額は、5,500円×6倍×40年=132万円です。
国民年金と合計して、総年金受給額は132万+78万=210万円/年です。
年金受給開始65歳から、平均寿命84歳まで、20年年金を受給すると、
210万円×20年=4,200万円なので、厚生年金支払額2,200万円に比べると、元が取れているように見えます。
この辺が本当にセコくて
企業も個人と同額を負担しているので、実際の年金支払額は2倍の4,400万です。それで4,200万しか回収できないので、本当に払い損ですどうもあr
企業が100%負担しようが、個人と折半しようが、個人が100%負担しようが、サラリーマンの年金支払後の所得と、企業が個人に払う支払額は変わりません。
(面倒なので税金は考えてません)
国民年金編で、「あれ?年金ってお得じゃね?」という感想を持った人も多かったと思います。そのからくりが、ここにありました。
国民年金は、厚生年金から財政を拠出してもらっています。横流しです。
本来、ルールとして国民年金と厚生年金を一体化、もしくは完全分離させればよかったのに、国民年金をお得に見せたいがために、無理して厚生年金から財政横流しすることになってしまいました。
こんな分かりにくい設計、詐〇以外の何物でもないと思います。
逆に言うと、国民年金自体は、サラリーマンからボッタくっているので、超絶お得商品です。フリーランス・自営業で納付しないやつはアホ。
企業年金とは
これは大企業限定ですが、企業が退職金を、一部年金として受給できるような制度にしてくれていることがあります。大企業限定です(2回目)。年金で言うと、3階分とよく言われます。(1階国民年金、2階厚生年金)
これがあると、厚生年金のしょぼさを穴埋めしてくれますが、だいたいは確定給付型(年金額を確定してあげる、運用責任は企業にある年金制度)で、想定利回りがバブル時代から止まっている企業年金も多いので、今後問題になるでしょう。
なぜこんなことになっているかというと、労働組合が利下げにうるさいからです。労働者の権利ですからね。
年金原資が全然足りなくて、低金利時代なので想定利回りに足りず、債務超過に陥っている年金基金も多いと思います。企業が穴埋めしてくれればいいのですが、この状況でどうなるか、、、。株高にうまく乗れているところはいいけど。
JALの破綻時、企業年金カットが問題になったように、いつ自分の会社が破綻するかわからない時代に、確定給付型企業年金はリスクしかないと思います。
引退後にこうなっちゃうとほんとつらいよね。
実際、米国では確定給付型企業年金制度はほとんど消えました。今は、確定拠出型(お金は企業が出してあげて、運用責任は個人にある制度)に移行しています。
また、転職が当たり前の時代に、終身雇用を前提とした企業年金制度自体が前時代的と言わざるを得ません。
日本も、個人型確定拠出年金(Ideco)が流行り始めているように、
企業年金に頼らない仕組みができつつあるのではないかと思います。
最後に
厚生年金のやばさはもっと広まっても良いと個人的に思っています。
まとめ編では、年金財政について分析したいと思っているので、よろしくお願いいたします。